地球を見下ろして

地球的観点から書く

北極圏でさそり座は見えない

北極圏にあるノルウェーのトロムソはオーロラの名所として有名である。満天の星の中に光るオーロラは誰もが一度は憧れたことがあるに違いない。しかし、トロムソで見られる星空は日本で見られるものとは異なる。北極圏まで行くと、南天の星の大部分は常に地平線の下にあるために全く見られなくなる。トロムソは北緯70度にあるので、赤緯が南緯20度より南の星は全く見られない。実際には大気による浮き上がりを考慮すれば南緯21度辺りの星までは見ることができる。しかし、さそり座のアンタレスは南緯26度にあるのでトロムソからは見ることができない。さそり座の北端にあるβ星なら南緯20度なので辛うじて見られることになるが、いずれにせよ蠍の形を辿ることはできない。しかも、さそり座が見られる夏はトロムソでは白夜となるので星座を見ることはそもそも困難である。秋の夜空で唯一の1等星であるフォーマルハウトは南緯30度にあるのでこれも見ることができない。全天で一番明るいシリウスは南緯17度なので一応見えるが、地平線ギリギリになるので大気の影響を受け、明るさを実感することは難しそうである。

その代わり、北極圏に行けば北半球の多くの星は地平線下に沈まないことになる。例えば、北緯39度にあるベガや北緯46度にあるデネブは常に見られる。アークトゥルスは北緯19度にあるのでわずかに沈むが、大気の影響を考慮すればほぼ沈まないも同然である。すばるも北緯24度にあるので一晩中見ることができる。ちなみに、北極点まで行けば、星は地平線と平行に動くので全ての星は常に地平線上にあるか、決して地平線上に昇らないかのいずれかになる。北極星は空の真上で煌々と輝くことになる。